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山小屋泊の持ち物リスト|北アルプスに泊まってわかった本当に必要なもの

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初めて山小屋に泊まる前の晩、私はザックの前で固まっていました。

布団はあるのか。風呂には入れるのか。そもそも何を持っていけばいいのか。宿なのか、それともテント泊に近いのか。その区別すらついていませんでした。

検索しても出てくるのは「登山の基本装備」の話ばかりで、私がいちばん知りたかった「泊まる」部分の情報はなかなか見つかりません。結局その日は、寝袋と大きなバスタオルをザックに押し込んで出発しました。

どちらも、ほぼ使いませんでした。代わりに、耳栓を持っていかなかったことを一晩中後悔しました。

あれから北アルプスの山小屋にいくつも泊まりました。この記事では、そのなかで私が本当に必要だと感じたものと、正直いらなかったものを、できるだけ正直に書きます。

目次

山小屋は「宿」とどう違うのか

持ち物の話に入る前に、前提を揃えさせてください。ここを勘違いしていると、持ち物選びを丸ごと間違えます。私がまさにそうでした。

山小屋は「山の上にある旅館」ではありません。かといって、すべてを自分で背負うテント泊とも違います。その中間にある、独特の場所です。

布団と食事は基本的に用意される

ここが最大の違いです。予約時に「1泊2食付き」を選べば、布団も夕食も朝食も小屋が用意してくれます。だから寝袋も鍋も要りません。

ただし「素泊まり」で予約した場合は食事が出ません。予約内容は必ず確認してください。

風呂は基本的にない

水が貴重な山の上では、風呂のない小屋がほとんどです。一部に入浴できる小屋もありますが、石けんやシャンプーは使えないのが一般的です。

つまり、汗をかいた体をどうするかは自分で考える必要があります。ここが持ち物に直結します。

消灯が早い

20時から21時ごろに消灯する小屋が多いです。翌朝は日の出前に動き出す人がいるので、夜は驚くほど静かに、そして早く訪れます。

消灯後は本当に真っ暗になります。スマホの明かりで照らすのはまわりの迷惑になるので避けたいところです。

電源・コンセントは限られる、または有料

山小屋の電気は自家発電が中心です。宿泊者が自由に使えるコンセントがない小屋、有料の充電サービスだけを用意している小屋、時間帯を区切って開放している小屋と、対応はさまざまです。

「充電できる前提」で計画を立てないほうが安全です。

相部屋が基本

知らない人と同じ部屋、同じ寝床の並びで眠ります。混雑期は隣の人と肩が触れるくらいの間隔になることもあります。

個室のある小屋もありますが、数は少なく、早い段階で埋まります。

現金しか使えない小屋がある

キャッシュレス決済に対応した小屋も増えてきましたが、電波状況によっては使えないこともあります。売店での買い物やトイレのチップも含めて、現金は必ず持っていってください。

まとめると、山小屋泊の持ち物とは「寝床と食事はあるけれど、快適さは自分で用意する」ための道具です。この視点で見ると、何が要って何が要らないのかが一気にはっきりします。

山小屋泊の持ち物リスト|必ず持っていくもの

レインウェア、行動食、水、地図といった登山の基本装備は持っている前提で進めます。ここでは「泊まるからこそ要るもの」だけに絞ります。

ザックや登山靴、レインウェアといった大きな道具をこれから揃えるという方は、先に山小屋泊デビューに|初心者の登山装備リストを読んでみてください。あちらは「何を買うか」、この記事は「何をザックに入れるか」の話です。

耳栓|私にとってはこれが一番効いた

ひとつだけ選べと言われたら、私は迷わず耳栓を挙げます。

初めての山小屋泊で、私はほとんど眠れませんでした。理由ははっきりしていて、いびきです。相部屋に20人いれば、そのうち何人かは必ずいびきをかきます。誰が悪いという話ではなく、そういう場所なのです。

翌日は稜線を歩くのに、睡眠不足のまま出発するのは体力的にも判断力的にも不安があります。耳栓ひとつで眠れる確率が上がるなら、これほど費用対効果の高い持ち物はありません。

選ぶときは、フォームタイプ(指でつぶして耳に入れる柔らかいもの)が扱いやすいです。小さいので枕元で行方不明になりがちですから、ケース付きのものか、予備をもうひと組持っていくと安心です。

アイマスク

消灯後は暗いのに、なぜアイマスクが要るのか。理由は夜中と早朝にあります。

トイレに立つ人のヘッドライトが顔を横切ったり、3時4時に出発する人の身支度で明かりがついたりします。自分がゆっくり寝ていたい日ほど、これが響きます。

軽くてかさばらないので、耳栓とセットでジップ袋に入れておくと荷造りが楽です。

モバイルバッテリー

前の章で触れたとおり、山小屋で充電できるかどうかは小屋しだいです。無料で使えるコンセントがない小屋、有料の小屋、そもそも数が足りず順番待ちになる小屋があります。

しかもスマホは、電波の弱い場所では基地局を探し続けてバッテリーを消耗します。「山では減りが早い」と感じるのはこのためです。写真を撮り、地図アプリを開き、翌日の天気を確認していると、思ったより早く残量が心もとなくなります。

1泊なら10000mAhクラスがあれば十分だと感じています。それ以上の容量は重さのほうが気になりました。使わない時間は機内モードにしておくと、そもそも消耗を抑えられます。

ヘッドライト(枕元に必ず置く)

ヘッドライトは登山の基本装備ですが、山小屋泊では「どこに置いて寝るか」まで含めて考えておきたい道具です。

消灯後の小屋の中は本当に真っ暗です。トイレに行こうとしてザックを探り、他の人を起こしてしまうのは避けたいところ。枕元、あるいは寝袋の内側など、手を伸ばせば届く位置に置いて寝るのが鉄則です。

私が使っているのはブラックダイヤモンドのヘッドランプです。買ってからずいぶん経つモデルで、単4電池が3本入るタイプ。この「乾電池式」というのが、山では安心材料になっています。

充電式は普段は便利ですが、山の上で切れたら打つ手がありません。乾電池式なら、予備をひと組ジップ袋に入れておくだけで済みます。

これから買う方には、赤色灯モードの付いたモデルをおすすめします。夜中に点灯するとき、白色の光は暗さに目が慣れた人にとって思っている以上に強い刺激になるからです。

私が使っているのはずいぶん古いモデルですが、今の定番は同じシリーズの「スポット」です。乾電池式で、防水もしっかりしています。

インナーシーツ、またはシュラフカバー

インナーシーツは、寝袋や布団の内側に入れて使う薄い袋状のシーツのことです。シュラフカバーは寝袋にかぶせる防水カバーを指します。

山小屋の布団は毎日洗えるものではありません。潔癖である必要はまったくありませんが、汗をかいた体でそのまま入るより、一枚はさんだほうが自分も気持ちよく眠れます。

小屋によってはインナーシーツの持参を求められたり、貸し出しや販売をしていたりします。予約時の案内を確認してください。指定がある場合は、それに従うのが確実です。

小屋で履くサンダル

登山靴を脱いだあと、館内で何を履くか。共用のスリッパやサンダルを用意している小屋は多いのですが、混雑時は数が足りなかったり、サイズが合わなかったりします。

用意のない小屋もあります。夜中にトイレへ行くとき、素足のまま出るのはさすがにつらいものです。

選ぶときのポイントを、ひとつだけ。かかとを留められるタイプにしてください。

トイレが小屋の外にある山小屋は珍しくありません。蝶ヶ岳ヒュッテもそうでした。夜中、暗いなかを外まで歩くのに、かかとの留まらないスリッパ型では心もとないのです。

折りたためてザックの隙間に押し込めるサイズなら、荷物としてほとんど気になりません。この身軽さと一晩の快適さを引き換えにできるなら、私は持っていく側に立ちます。

現金(千円札を多めに)

宿泊費のほかに、売店での飲みもの、トイレのチップ、有料の充電サービスなど、山の上では細かな支払いが発生します。

山小屋は両替所ではありませんから、一万円札ばかりだとお互いに困ります。千円札を厚めに、それと小銭を少し。これだけで、けっこう気が楽になります。

濡らさないよう、ジップ袋に入れておくと安心です。

常備薬・絆創膏・エマージェンシーシート

山小屋には売店があっても、薬局はありません。頭痛薬、胃腸薬、いつも飲んでいる薬は、必ず自分で持っていってください。

絆創膏はマメ対策として。標高が上がると気圧の変化で頭が重くなる人もいるので、痛み止めがあると心強いです。

エマージェンシーシートは薄いアルミの保温シートで、非常時に体温の低下を防ぐためのものです。手のひらサイズで数十グラム。使わずに終わるのが一番いい道具ですが、だからこそ入れっぱなしにしておく価値があります。

絆創膏やテーピングは、ひとまとまりになったファーストエイドキットを買ってしまうのが楽です。一度揃えれば、あとはザックに入れっぱなしにしておけます。

ただしキットの中身は商品によってかなり違います。エマージェンシーシートが入っていないものもあるので、購入前に内訳を確認してください。そして薬だけは、キットに頼らず自分に合うものを用意するのが確実です。

軽量タオル・汗拭きシート

風呂に入れない以上、汗をどう処理するかは自分の課題です。

私は、汗拭きシートで首まわりと背中を拭き、着ていたシャツを乾いたものに替えるところまでをひとつのセットにしています。これをやるかやらないかで、夜の寝つきがはっきり変わりました。

選ぶなら個包装のものを。1泊なら2〜3枚だけ抜いて持っていけばよく、袋ごと担ぐ必要がありません。背中まで届く大判サイズだと、拭き残しが出ません。

タオルは、速乾性のある薄手のものを一枚。大きさは手ぬぐいくらいで足ります。理由は次の章で書きます。

あると快適なもの

ここからは、なくても困らないけれど、あると一晩の質が上がるものです。

圧縮袋・スタッフサック

寝床の一人ぶんのスペースは、思っているより狭いです。そこでザックの中を探しはじめると、荷物が広がって隣の人の場所まで侵食してしまいます。

「着替えはこの袋」「小物はこの袋」と色分けしておけば、暗い中でも手探りで目的のものにたどり着けます。ダウンや着替えは圧縮袋に入れると、ザックの中に余裕も生まれます。

保温ボトル

夏でも、標高の高い小屋の朝は冷えます。前夜のうちにお湯をもらって入れておくと、日の出前の出発時に温かいものが飲めます。

お湯の販売をしている小屋が多いですが、対応は小屋によって違います。空のボトルだけ持っていって、現地で確認するのがいいと思います。

携帯枕、または衣類で代用する方法

枕が用意されている小屋がほとんどですが、高さが合わないことがあります。

私はもっぱら代用派です。翌日着る予定のフリースやダウンを、スタッフサックに詰めて枕にします。空気で膨らませるタイプの枕も軽くていいのですが、荷物をひとつ減らせるという意味では代用のほうが好きです。

行動食の予備

2食付きで予約していても、夕食が思ったより早い時間だと、夜中に小腹がすくことがあります。逆に、天候が崩れて翌日の行程が延びる可能性もあります。

ようかんやナッツなど、日持ちして軽いものをひとつふたつ。売店で買えることも多いですが、値段は下界より高くなります。

山小屋泊で実はいらなかったもの

ここが、私がこの記事でいちばん書きたかった章です。持ち物リストは足し算ばかりになりがちですが、荷物が重ければそのぶん歩くのがつらくなります。引き算の情報も同じくらい大事だと思っています。

大きなバスタオル

初回に持っていって、まったく使いませんでした。当たり前です、風呂がないのですから。

体を拭くだけなら手ぬぐいサイズで十分ですし、綿のバスタオルは濡れると乾かないうえ、かさばって重い。今は速乾タオル一枚だけにしています。

寝袋

これも初回に背負っていきました。布団が用意されていると知らなかったのです。

2食付きであれ素泊まりであれ、寝具は小屋が用意してくれるのが基本です(小屋の方針によっては例外もあるので、予約時の案内は確認してください)。数百グラムから1キロ以上ある寝袋を担がずに済むのは、体力的にかなり大きい差です。

着替えの持ちすぎ

1泊2日なのに、上下2セットの着替えを入れていた時期がありました。

実際に替えたくなるのは、肌に直接触れるものです。下着とインナーシャツを一枚ずつ。あとは寝るときに着る薄手のものがあれば足ります。汗をかいたシャツは翌朝また着ることになりますが、それで困ったことはありません。

大きな洗面用具一式

シャンプーやボディソープは使う場面がありません。歯みがきも、水の使用が制限されている小屋があります。

私は水の要らない歯みがきシートに切り替えました。洗面用具はほとんど空っぽになり、小さなポーチひとつに収まっています。

分厚い本や大きなカメラ機材

「夜は時間があるだろうから」と本を持っていったことがあります。消灯は20時すぎ、しかも読むための明かりがありません。

カメラ機材も同じで、私の場合は結局いつも同じレンズしか使いませんでした。翌日の登りで重さを恨むくらいなら、置いていく判断もあると思います。

山小屋泊の持ち物は小屋によって変わる

野口五郎小屋

この記事の表には入れていない小屋ですが、ここもまた違う一軒でした。

ここまで共通の持ち物を書いてきましたが、最後にどうしても伝えておきたいことがあります。山小屋は、一軒ごとにまるで別の施設です。

サンダルが揃っている小屋もあれば、ない小屋もある。売店が充実している小屋もあれば、最小限の小屋もある。だから「山小屋泊の持ち物」を一枚のリストで完結させることはできません。

私が実際に泊まった小屋を並べておきます。設備は年によって変わることがあるので、最終的な確認は各小屋の公式情報でお願いします。個別の様子は、それぞれのレビュー記事に書きました。

小屋名食事・名物充電売店
唐松岳頂上山荘夕食は名物ハンバーグ充電スペースあり(混みやすい)あり(酒類・菓子・飲料水)水場なし。売店で有料販売
笠ヶ岳山荘2食付・弁当ありあり(飲料・軽食・バッジ)稜線上で貴重。販売状況は要確認
五竜山荘2024年リニューアルの食堂充電スペースありあり(名物Tシャツ・軽食)
涸沢ヒュッテテラスの生ビールとおでんあり(充実・オリジナルグッズ)天水のため飲用は煮沸推奨
涸沢小屋手づくりの家庭料理あり(ヒュッテよりコンパクト)
蝶ヶ岳ヒュッテ安曇野産の米と手づくり味噌充電スペースあり(混みやすい)あり水場なし。200円/1L
常念小屋名物「常念ピザ」など軽食が充実あり(パン・行動食)200円/1L で販売
白馬山荘展望レストラン「スカイプラザ白馬」あり(グッズ・行動食・ドリンク)水場あり
双六小屋名物「双六ラーメン」・喫茶ありあり豊富
雲ノ平山荘丁寧な夕食。デザートが付く日も充電設備あり(混みやすい)あり(水・お湯・お茶)水場なし。雨水を50円/500ml

「―」は、私のレビュー記事で触れていない項目です。設備は年によって変わりますので、確実な情報は各小屋の公式サイトでご確認ください。

この表を眺めていて、あらためて思ったことがあります。水場のない小屋が、思っていたより多い。 唐松岳頂上山荘、蝶ヶ岳ヒュッテ、常念小屋、雲ノ平山荘は水場がなく、水は買うものです。1リットル200円、雲ノ平では500mlで50円。

登山口で何リットル担ぐかは、その日の荷物の重さを大きく左右します。持ち物を考えるときは、泊まる小屋の水事情を先に調べておくと判断しやすくなります。

もうひとつ。現地で借りられるものもあります。 たとえば涸沢小屋には、ヘルメットの有料レンタルと、宿泊者向けのサブザック無料レンタルがあります。翌日に北穂や奥穂を狙う人なら、荷物をひとつ減らせるということです。

気になる小屋があれば、リンク先で実際の様子を見てみてください。部屋の広さ、食事の内容、予約の取り方など、泊まる前に知っておくと安心できることを書いています。

まとめ|山小屋泊の持ち物チェックリスト

最後にチェックリストの形でまとめます。荷造りをしながらスマホで確認してもらえればうれしいです。

必ず持っていくもの

  • 耳栓(相部屋のいびき対策)
  • アイマスク
  • モバイルバッテリー(充電できない小屋がある)
  • ヘッドライト(枕元に置いて寝る)
  • インナーシーツ、またはシュラフカバー
  • 小屋で履くサンダル
  • 現金(千円札を多めに、小銭も)
  • 常備薬・頭痛薬・絆創膏
  • エマージェンシーシート
  • 速乾タオル・汗拭きシート
  • 下着とインナーシャツの替え(各1枚)

あると快適なもの

  • 圧縮袋・スタッフサック
  • 保温ボトル
  • 携帯枕(衣類で代用も可)
  • 行動食の予備
  • 水の要らない歯みがきシート

置いていっていいもの

  • 大きなバスタオル
  • 寝袋(多くの小屋では不要)
  • 着替えの持ちすぎ
  • シャンプー等の洗面用具一式
  • 分厚い本、使わないカメラ機材

出発前に確認しておくこと

  • 予約が「2食付き」か「素泊まり」か
  • インナーシーツの持参指定があるか
  • 支払い方法(現金のみかどうか)
  • 消灯・朝食の時間

初めての山小屋泊は、わからないことだらけで不安だと思います。私もそうでした。でも、必要なものはこれくらいで、余計なものは意外と多い。それがわかっているだけで、荷造りの手が止まらなくなります。

いい夜になりますように!

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